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北欧デザインの原点 アアルト建築を巡る① フィンランド・ヘルシンキ アカデミア書店&フィンランディアホール編 北欧2週間旅

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北欧インテリアと言えばアアルト。その建築とデザインを実際に体感することも、今回の旅の大きな目的のひとつでした。ヘルシンキの街を歩きながら訪ねたのは、アカデミア書店、アアルトカフェ、フィンランディアホール、そして郊外のアアルト邸と設計事務所。
写真や本で見てきた空間に実際に身をおいてみると、アアルト建築は、単なるデザインではなく、「そこに過ごす人が心地よく過ごすための空間」であるというアアルトの思想が自然と伝わってきました。

アアルトについて

アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto, 1898–1976)は、20世紀を代表する北欧の建築家・デザイナーです。ヘルシンキ工科大学(現アアルト大学)で建築を学び、1920年代に独立。アアルトは単なる建築家ではなく、「人の暮らしを豊かにするデザイン」を追求した総合的なクリエイターでした。建築、家具、照明、ガラス器に至るまで、自ら設計・デザインを行い、「人間のためのモダニズム」を提唱しました。その思想は、のちの北欧デザインの礎となっています。

アアルトを支えた2人の妻

アアルトの人生と創作には、2人の女性建築家が深く関わっています。どちらも彼の作品に大きな影響を与えた、人生のパートナーであると同時に建築家としてのパートナーでもありました。

初婚の妻:アイノ・マルシオ(Aino Marsio, 1894–1949)

アアルトの最初の妻であり、最も信頼できる共同設計者でした。1924年に結婚し、二人で設計事務所を立ち上げます。アイノは建築だけでなく、インテリアや家具デザインの分野でも重要な役割を果たしました。アアルトの建築に見られる「温かみ」「家庭的な居心地」「光の柔らかさ」といった要素には、彼女の感性が色濃く反映されています。アイノはアアルトと違い、控えめで緻密な性格だったとされ、二人の対照的な性格が絶妙なバランスを生み出していました。
1949年、54歳で病没。彼女の死はアアルトにとって大きな転機となります。

再婚の妻:エリッサ・マキニエミ(Elissa Mäkiniemi, 1922–1994)

アイノの死から数年後、アアルトは事務所のスタッフであった若い建築家エリッサと再婚します(1952年)。エリッサは、前妻のアイノとも親交が深く、アアルトより24歳年下でしたが、彼の晩年の創作活動を支えました。

アアルトの死後も、エリッサは「アアルト事務所」を継承し、未完のプロジェクトを完成させるほか、彼の遺志を伝える活動に尽力しました。彼女の尽力により、今日アアルトの建築群は世界中で評価され続けています。

アアルトデザインの代表的な家具3点

数多くあるアアルトデザインの中から特に有名な3つの椅子をご紹介します。

スツール60(Stool 60, 1933)

  • アアルトの代表作であり、世界的な名作スツール。
  • 3本の脚を「Lレッグ(L-leg)」と呼ばれる成形合板技術で直角に曲げ、座面に直接取り付ける構造。
  • 軽くて丈夫、スタッキング(重ねて収納)できる実用性も高い。
  • 現在もフィンランドの家具メーカー「アルテック(Artek)」から製造販売。

アームチェア 41「パイミオチェア」(Paimio Chair, 1932)

  • 「パイミオのサナトリウム」のために設計された椅子。
  • 成形合板を大胆に曲げた優雅なフォルム。
  • 当時としては革新的な素材使いで、軽く、患者が呼吸しやすい角度に設計された。

*アアルトの設計事務所にあり、見学者は実際に座ってみることができます。座り心地を実感でき、貴重な体験でした。

チェア66(Chair 66, 1935)

  • 背もたれがやや高く、シンプルながら温かみのある椅子。
  • 木の柔らかさと幾何学的な造形が融合している。
  • 学校やカフェなど、公共施設でも多く使用。

ブランド「Artek(アルテック)」

アアルトが1935年に妻アイノとともに設立した 「Artek(アルテック)」 が、これらの家具や照明を現在も製造・販売しています。「Artek」という名前は「Art(芸術)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語で、アアルトの理念そのものを表しています。

ヘルシンキ中心部、エスプラナーデ通りの一角にあるArtek Helsinki(アルテック・ヘルシンキ本店)は、アアルトが設立したブランドの世界観をそのまま体験できる空間で、家具だけでなく照明や雑貨、ポスターまで洗練されたデザインが並びます。ストックマン百貨店からすぐの便利な場所にあるので、街歩きの途中に立ち寄ってみては?

アアルト建築の特徴

アアルトの建築は、冷たい印象を持つ近代建築(モダニズム)に、人間らしさと温かみを取り戻した点で高く評価されています。「機能主義と人間主義の融合」とも言われます。主な特徴として、以下の3点があげられます。

  1. 曲線や木材など自然素材を積極的に使用
  2. 建物の用途・光・音・環境などを丁寧に考慮
  3. 白一色のモダニズム建築とは異なり、有機的で柔らかい造形

アアルトによる代表的な建築作品

多くの建築作品を残したアアルト。その中から代表作ともいえる作品をご紹介します。

実際に説明を受けながら内部を見学できるアアルトハウスと設計事務所については、こちらから⤵

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自然光降り注ぐアカデミア書店とアアルトカフェ

ヘルシンキ中心部にあるアカデミア書店(Akateeminen Kirjakauppa)は、白い大理石と木の温もりが調和した空間。店内は、天井から自然光が降り注ぎ、静かで心地よい空間が広がっています。まさに「本と光の聖堂」という表現がぴったり。つい長居したくなる居心地の良さでした。

2階にあるアアルトカフェ(Aalto Café)では、アアルトデザインの椅子や照明に囲まれながら、ランチやカフェ時間を過ごすことができます。

建物のドアハンドルや照明の位置に至るまで、細部にアアルトのこだわりが感じられ、「人が気持ちよく過ごせる空間とは何か」を実感できました。

白い大理石が美しいフィンランディア・ホール(Finlandia Hall)

ヘルシンキを象徴する建築のひとつ。トーロ湾の対岸から眺める白い大理石の外観は、湖面に映える彫刻のように美しく、どの角度から見ても堂々とした存在感を放っていました。内部は波打つような天井や壁の曲線が印象的で、音響にも優れた設計だということです。

癒しのパイミオのサナトリウム(Paimio Sanatorium)

アアルトの名を世界に知らしめた建築のひとつです。1930年代初頭、結核療養所として設計されたこの建物には、「病院」という枠を超えた、人を癒やすための建築哲学が詰まっています。アアルトは、患者が少しでも快適に過ごせるよう、光・空気・音・色のすべてに心を配りました。病室の天井は、ベッドで横になる患者の視点から見て落ち着く色に塗られ、窓の位置は朝の柔らかな光が自然に差し込むよう設計されています。また、階段の段差や手すりの高さ、照明の角度までもが、人の身体の動きに合わせて緻密に計算されています。(今回訪問はしていません。アアルトハウスでのガイドのお話より)

アアルトがこの療養所のためにデザインしたパイミオチェア(Armchair 41)は、アアルトの設計事務所で実際に座ることができ、身体を預けた瞬間に「人のためのデザイン」とはこういうものなのだと実感しました。

さらに、アアルトハウスにも採用されている独特のドアハンドルも、パイミオのサナトリウムで初めて考案されたもの。服の袖が引っかからないよう配慮された滑らかな形状で、機能的でありながら見た目にも美しいデザインでした。忙しく働く看護師や医師、そして患者に寄り添うその設計思想には、アアルトの優しさと深い人間愛が感じられます。

アアルト大学キャンパス(旧ヘルシンキ工科大学)

赤レンガと有機的な形状で、自然と建築の調和を重視された建築。エスポーにあります。(今回は訪問なし)いつか行ってみたい所のひとつです。

りんりん
りんりん

アアルト建築&インテリアを体感することで、北欧のシンプルで洗練されつつ美しいデザインが、人の暮らしに根付いていることを感じました。

Have a nice trip

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