あらかん女子ひとり旅 海外

北欧インテリア・建築の巨匠アアルトを巡る② フィンランド・ヘルシンキ アアルトハウス、設計事務所 北欧2週間旅

この記事は約8分で読めます。

今回の旅のハイライトのひとつは、アアルト邸、そしてアアルトの設計事務所見学でした。北欧デザインの礎を築いた建築家、アルヴァ・アアルト。彼が暮らし、仕事をした空間を実際に身を置くことで、「北欧ならではの洗練されたインテリア」を心から感じられる体験でした。実際の体験を感想も交えて2つのアアルトスポットをご紹介します。

北欧デザインの原点 アアルト建築を巡る① フィンランド・ヘルシンキ アカデミア書店&フィンランディアホール編 北欧2週間旅
北欧インテリアと言えばアアルト。その建築とデザインを実際に体感することも、今回の旅の大きな目的のひとつでした。ヘルシンキの街を歩きながら訪ねたのは、アカデミア書店、アアルトカフェ、フィンランディアホール、そして郊外のアアルト邸と設計事務所。...

見学には、事前予約必須!

どちらの見学も曜日と時間が決まっている事前予約制なので、ネット予約必須です。日本語と英語のツアーがあり、それぞれ60分です。ガイドツアー(約30分)では、部屋の一つひとつを回りながら、詳細に説明してもらうことができます。スタッフの丁寧な説明で、建築の細部のこだわりを知り、その背景やアアルトの想い、姿勢を学ぶことができます。質問にも丁寧に答えていただきました。その後さらに30分ほど自由に屋内を見て回ることができます。撮影も自由でした。2つのスポットはどちらも見どころ満載!セットで見学することをおすすめします。 👉 https://shop.alvaraalto.fi/en

アアルト・ハウス(Aalto House)ー 心地よい暮らしの理想形

それと言われなければ気づかないぐらいに、閑静な住宅街の中に溶け込みながら立っているアアルト邸。時間より早くに到着したので、アアルト邸の周りの庭をぐるっと回って家全体をいろんな角度から眺めてみました。外から見てもどの角度から見ても洗練された美しい建物です。庭も緑いっぱい。

時間が来るとドアが開いて中へ。玄関口で靴とバッグをクローゼットに預けます。ガイドツアーは、15名ほどの少人数制。英語のツアーだったので、いろんな国からの参加者がありました。

アアルト・ハウス(Aalto House)とは?

建築家アルヴァ・アアルトが自らの自邸兼アトリエとして設計した住宅で、彼の設計思想と美学を体現する代表的な作品のひとつです。シンプルでありながら温かみがあり、「北欧の暮らし」と「機能美の融合」を感じられる名建築です。

<アクセス> トラム4番で中心部から約20分、停留所「Aalto-talo」または「Laajalahden aukio」下車徒歩約7分

建築の特徴と見どころ5選

1. 「機能」と「温かみ」の共存

外観は白い漆喰の壁と茶色の木材を組み合わせた柔らかな印象。街路側は閉じたデザインでプライバシーを保ち、庭側に大きな窓を設けて自然光をたっぷり取り入れています。

2. 居住空間とアトリエ空間の一体化

1階には建築事務所(アトリエ)が併設され、2階が家族の住まい。仕事と生活の空間がほどよくつながりながらも、さりげなく仕切られています。

3. 自然素材の美しさ

白壁、レンガ、木材(特にバーチ材)の組み合わせが特徴的。家具や照明、ドアノブに至るまでアアルト自身のデザインによるもので、自然素材の温かさが感じられます。人工的ではなく、「暮らす人の心地よさ」を最優先に考えられた空間です。

4. 光の設計

アアルトは「光をデザインする建築家」とも呼ばれます。アアルト・ハウスでも、北欧特有の柔らかな自然光が美しく室内に広がるよう工夫されています。日照角度を緻密に計算して配置された窓や、間接照明の使い方が秀逸です。

5. 家具と調度品

室内には、アアルトがデザインしたアルテック(Artek)社の家具が並びます。代表的な「スツール60」、曲木のテーブルなどが自然に配置され、空間全体が彼のデザイン哲学の展示のようです。

アアルトの人柄を感じる

スタッフによるガイド内容がとても興味深く、予想していたよりもずっと面白くて、アアルトの人柄が垣間見ることができる話や、夫人(同じく建築家でありデザイナーであるアイノ)との心温まるエピソード、などとても楽しかったです。

アアルトのちょっとお茶目な逸話もありました。秘書が受付で来客を受けてアアルトに知らせることになっていました。そこで、もしその来客がアアルトにとって、ちょっと苦手な人だった場合に逃げ込める小部屋があって。居留守を使ってた?!

アアルトハウスのインテリアにどこか懐かしい感じがするのは、日本の文化を取り入れているからでした。例えば、すだれを思わせるブラインドや引き戸などです。面白いことにアアルトは、1度も日本を訪れたことがないのに、こうした日本の文化を取り入れていることです。ガイドさんに尋ねてみると、アアルトの親しい友人や仲間に日本の建築様式について詳しい人がいたようです。その人たちからの話や写真集、文献などから日本への興味と関心が広がり、それがインテリアにも生かされているようでした。良いと思えば異国の文化も取り入れるアアルトの柔軟な姿勢が伺えますね。

アアルト邸のインテリアは住む人がとても居心地よく過ごせるように設計されていることが1時間の滞在でもよくわかりました。光と風、そして庭の緑が細やかに設計され取り入れられていて、心癒される場所でした。

アアルト設計事務所 ー 自然と光を併せ持つ創造の場

アアルトハウス見学ガイドツアーの後は、徒歩で約10分の設計事務所に向かいます。

アアルト設計事務所(Studio Aalto, スタジオ・アアルト)とは?

アルヴァ・アアルトが自身の建築活動の拠点として設計したアトリエ兼事務所です。彼の創造的活動の中核を担った場所であり、現在は一般公開され、アアルトの設計思想や仕事の様子を間近に感じることができます。

アトリエの背景と目的

アアルトはそれまで、自邸である「アアルト・ハウス(1936年)」の1階部分を事務所として使っていました。しかし、スタッフの増加や大型プロジェクトの増加に伴い、より広く独立した作業空間が必要になったため、近くの土地に新しいスタジオを設計しました。このスタジオは、アアルトが成熟期を迎えた1950年代の代表作の一つであり、建築家自身の理想的な仕事空間として設計されています。

スタジオの4つの特徴

1. 外観:静かな白い壁に囲まれた創造の庭

通りに面した外観は、一見すると白い壁に囲まれた閉ざされた建物のように見えます。しかし、内部に入ると光が差し込む中庭があり、そこに向かって建物が開かれています。この「閉じた外観と開かれた内側」という構成は、アアルトの建築の典型的な手法です。外からの喧騒を遮断し、内部に静寂と自然光を取り込むことで、スタッフが創造的に仕事に集中できる環境を作り出していました。

2. 内部構成:段差と光のリズム

内部は複数のレベル(段差)で構成され、設計チームの作業スペース、会議室、模型制作室、資料ライブラリーなどが緩やかにつながっています。中でも目を引くのは大きな傾斜した天窓でした。北欧の柔らかな自然光が降り注ぎ、昼でも穏やかな明るさに満ちています。白い壁と木材の天井、そしてもちろん家具にもアアルト自身がデザインしたものが多く用いられています。

3. 中庭(アトリウム)

建物の中心にある小さな中庭には、白い壁を背景に木々と石が配置され、まるで彫刻庭園のよう。この庭は、アアルトが日本の建築や禅の庭からも影響を受けたとされ、光と影の対比が美しく演出されています。ここでも日本の影響がみられ、うれしくなります。

4. 家具・照明

アアルトが共同設立したArtek(アルテック)社の家具や照明が室内を彩っています。機能性と美しさを兼ね備えたデザインが、建築の一部として空間に溶け込んでいます。

アアルトの人間味あふれる一面

スタッフの机、アアルトの使っていた椅子、資料や模型などがそのままの状態で保存されており、当時の設計風景を体感できます。スタッフ一人一人が働きやすいように心配りされてことがよくわかりました。

事務所の食堂にはアアルト自身が座る指定席があって、そこからは食堂の人たちすべてが見渡せる位置にあります。また、先ほどの皆が集まる部屋には、アアルトが壇上から登場!するためのドアと階段があり、アアルトのちょっとした自己顕示欲も見受けられます。アアルトの人となり、温かく細やかでありながらもプライドを持って仕事をしてきた、そう感じさせるような建物と内容の充実したガイドツアーでした。

りんりん
りんりん

詳しいガイドツアーも自由見学も予想以上の満足度でした。両方にちょっとしたミュージアムショップがあり、グッズまで洗練されている!

穴場!アアルト邸のすぐ近くにある、もうひとつのアアルト建築

アアルト邸と設計事務所を見学したあとに、時間があればぜひ立ち寄ってほしいのが、同じムンキニエミ地区にあるアアルト設計のアパートメントハウス(Riihitie通り)です。観光ガイドにはあまり載っていませんが、地元では「隠れアアルト建築」として知られています。

アアルト邸から徒歩数分ほど。外観はレンガと白い壁の組み合わせが印象的で、
周囲の緑と調和する静かな佇まいがとても美しい建物です。内部は一般公開されていませんが、外から眺めるだけでもアアルトの設計哲学を感じられます。

アアルト邸や設計事務所で彼の思想を体感した後に訪れると、そのデザインが日常生活の中にも息づいていることを実感できます。観光客もなく、静かにゆっくり眺められる穴場スポットです。

りんりん
りんりん

インテリア好きにはたまらない北欧インテリアの真髄を堪能した一日でした🎵

Have a nice trip

タイトルとURLをコピーしました